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奨学金の保証人になるとどうなる?トラブルを防ぐポイントは?【奨学金アドバイザーが詳しく解説】

奨学金の保証人になるとどうなる?トラブルを防ぐポイントは?【奨学金アドバイザーが詳しく解説】
お子さんや親戚から奨学金の保証人になることを頼まれた際、引き受けるべきか悩むこともあるでしょう。
今回は、奨学金の保証人または連帯保証人になることで発生する権利・責任、保証人トラブルを防ぐためのポイントについて、奨学金アドバイザーの久米さんに解説してもらいます。ぜひ参考にしてください。

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監修:奨学金アドバイザー・久米忠史(くめ ただし)

はじめに

今回は、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金を例に解説をしていきます。

日本学生支援機構は、奨学金制度を実施する機関の中で最も利用者数が多い機関です。

奨学金には「給付型」と「貸与型」があります。
給付型は、返済義務のない奨学金です。ただし、受給条件が厳しく対象者が限られるという特徴があります。一方、貸与型は学校卒業後に返済義務が生じる奨学金です。

日本学生支援機構は、貸与型の奨学金を申請する学生に対して「保証制度」の選択を義務付けています。

奨学金の保証制度は2種類

日本学生支援機構(JASSO)の保証制度には、「人的保証」と「機関保証」の2種類があります。

人的保証

人的保証とは、連帯保証人保証人を選定する制度です。
奨学金の返済が滞った場合、奨学生に代わり連帯保証人や保証人に返済義務が生じます。

機関保証

機関保証とは、返済が滞った際は保証機関が代理で返済する制度です。

機関保証を選択した場合は、月々の奨学金から保証手数料が天引きされます。

保証機関に代理で返済してもらった場合、奨学生には保証機関への返済義務が課されます。
保証機関に返済してもらった場合も返済義務自体はなくならない点に注意しましょう。

人的保証と機関保証のどちらを選ぶべきか

では、人的保証と機関保証のどちらを選べば良いのでしょうか?

機関保証を選択した場合、毎月の奨学金から保証手数料が天引きされるのは先述した通りです。

そのため機関保証にすると、満額の奨学金を受け取れず奨学生には金銭的負担が生じます。

一方、人的保証の場合は満額の奨学金を受給できます。その点では、人的保証の方が有利であることは間違いありません。ただし、保証人や連帯保証人を選定できないケースもあり、現在は機関保証を選択する人が多いのが実情です。最近だと、だいたい人的保証が47%、機関保証が53%くらいの割合で使われています。

自身の状況に合わせて選ぶのが大切です。

奨学金の連帯保証人と保証人の違い

人的保証の場合、連帯保証人保証人を決める必要があり、それぞれ一定の条件があります。

連帯保証人になる人:親

連帯保証人になる人は、原則として両親のどちらかです。

連帯保証人になるには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 原則、父母。父母がいない場合、4親等以内の親族。
  • 未成年者および学生でない
  • 奨学生の配偶者や婚約者でない
  • 破産などの債務整理中でない
  • 貸与終了時に奨学生が満45歳を超えるとき、その時点で60歳未満である

保証人になる人:4親等以内の親族

保証人になる人は、原則としておじ・おば・兄弟姉妹等の4親等内の親族です。

保証人になるには、以下の条件をすべて満たしていることが条件です。

  • 4親等以内の親族(おじ・おば・兄弟姉妹など)である
  • 奨学生および連帯保証人とは別の生計である
  • 予約採用の場合、進学届(最終手続)提出時点で65歳未満である
  • 在学採用の場合、スカラネット(奨学金申請)入力の誓約日時点で65歳未満である
  • 未成年者および学生でない
  • 奨学生または連帯保証人の配偶者や婚約者でない
  • 破産などの債務整理中でない
  • 貸与終了時に奨学生が満45歳を超えるとき、その時点で60歳未満である

特例として、借りる予定の金額以上の預金がある場合などは65歳以上でも保証人になれます。

よく勘違いされる点で、親の収入証明書を出さないといけないですが、収入が少ないなどは問題になりません。ただし債務整理中の人は保証人になれないので、期間保証を選ぶことになります。

また、別れた夫や妻が保証人になることも可能です。例えばお母さんが連帯保証人になって、別れたお父さんが保証人になる、ということもあるのです。

責任や権利にも違いがある

連帯保証人と保証人とでは、責任や権利にも違いがあります。
連帯保証人は、保証人よりも重い責任を負います。連帯保証人は100%のリスクを持つということ、そして連帯保証人の保証人は半分の保証責任があるということ、をぜひ覚えておいてください。

連帯保証人は、奨学生本人が返済不能になった際、全額を返済しなければなりません。奨学生と「連帯」して責任を負う立場であることが、大きな特徴と言えるでしょう。

一方、保証人は奨学生本人や連帯保証人が自己破産などで返済能力を失った際に返済を課される立場です。保証人には「連帯保証人・保証人の人数で割った金額」の返済義務が生じます。

また、連帯保証人には認められず保証人だけに認められる権利3つを以下に紹介します。

  • 分別の利益
  • 検索の抗弁権
  • 催告の抗弁権

「分別の利益」とは、複数の保証人がいる際は保証人の数で割った分のみを返済すれば良いという権利です。そのため、奨学金の場合は、要返済額の2分の1の額になります。

そのほか、本人に資力があることを証明できれば本人に請求するように主張ができ(検索の抗弁権)、本人に請求していない分を請求された時は、まず本人に請求するように主張でき(催告の抗弁権)ます。

これらは民法で認められている保証人の権利ですが、日本学生支援機構が本人よりも前に保証人に請求することはないので、「分別の利益」が奨学金の保証人にとっては重要な権利といえるでしょう。

奨学金の保証人トラブルを防ぐポイント

奨学金の連帯保証人や保証人になることを依頼されると、断りづらい場合もあるでしょう。

ただし、奨学金の連帯保証人や保証人になるというのは、お金に関する一定の責任を負うことです。将来的にトラブルを招くようなことは、なるべく避けなければなりません。

ここでは、保証人トラブルを防ぐポイント2つを紹介します。

無理に連帯保証人・保証人を引き受けない

まずは、無理に連帯保証人・保証人を引き受けないことです。

奨学生にとっては人的保証を選択することで、奨学金を満額もらえるメリットがあります。そのため、「名前だけ貸してくれれば良いから」と言って連帯保証人もしくは保証人になることを懇願されるケースもあるでしょう。

しかし、連帯保証人もしくは保証人になることでの不安がある場合は、はっきりと断るのも大切です。無理をしてまで連帯保証人や保証人になると、後に自身の首を締めることになりかねません。

連帯保証人・保証人になるリスクを把握する

連帯保証人・保証人を引き受ける意思がある場合も、必ず事前にそのリスクを把握してください。

奨学生が学校卒業後に滞りなく返済していければ何の問題もありませんが、返済能力がない場合は自分が多額の返済義務を負うことになります。

万が一、奨学生が返済できなくなった場合は奨学生本人・連帯保証人・保証人に日本学生支援機構から電話や文書にて返済を督促されます。(日本学生支援機構が委託する機関から督促される場合もあります。)

そして、督促が来たにも関わらず返済ができない場合は、裁判所から「支払督促」等の通知が届きます。最悪の場合、財産の差し押さえの措置がとられることもあります。

これらのことからも、連帯保証人・保証人になることは大きなリスクを背負うことでもあるのです。

「断りづらいから」という理由で安易に連帯保証人・保証人を引き受けると将来的にご自身の生活に悪影響を及ぼしかねないことは、必ず覚えておいてください。

また、連帯保証人と保証人では責任や権利も大きく異なります。混同しないようにしておきましょう。

奨学金を返済できない場合の対処法

では、奨学金をどうしても返済できない場合の対処法はあるのでしょうか。

返済ができなくなることなど想像すらしたくないのが皆様の本音でしょうが、念のため知っておいて損はありません。

奨学金返済の救済制度を利用する

致し方なく返済が難しい場合は、下記のような救済策があります。

  • 減額返還制度
  • 返還期限猶予制度

奨学生が要件を満たし上記の制度利用をを認められた場合は、保証人もその期間において返済義務が生じません。

ただし、誰でも利用できるわけではなく、収入の要件があることには注意してください。

詳しくは以下の記事で解説していますので、合わせてチェックしてみてください。

奨学金以外に借金がある場合、借金を任意整理する

奨学金を借りている場合、奨学金以外にも借金があるケースもあり、その場合の策も考えなければなりません。

「任意整理」とは、債権者と相談し、将来分の利息をカットしてもらうなどした上で、借金を3年ほどで分割して返済する計画をすることです。

奨学金以外にも借金があると、その借金の返済に追われ、奨学金返済まで手が回らないこともあるでしょう。
そのような方は、奨学金以外の借金の返済負担を任意整理で軽減し、その分を奨学金返済に充てることも一つの選択肢です。

ドーミーラボでは、奨学金アドバイザー・久米忠史先生による解説など、奨学金に関する記事を多数配信しています!詳しくはこちらをご覧ください!

この記事の監修者:奨学金アドバイザー・久米忠史

この記事の監修者:奨学金アドバイザー・久米忠史(くめ ただし)
株式会社まなびシード 代表取締役。2005年頃から沖縄県の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが「わかりやすい」との評判を呼び、現在では高校だけでなく全国各地で開催される進学相談会や大学のオープンキャンパスなどで毎年150回以上の講演を行う。2009年には進学費用対策ホームページ「奨学金なるほど!相談所」を開設。

ライター
ドーミーラボ編集部

「夢中になれる学生生活」を探求するウエブマガジンです。進学や進路のあり方、充実した学生生活をおくるために実践できる知恵やヒントを発信していきます。