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【緊急特集】奨学金のプロが伝える「激変する進学事情」

【緊急特集】奨学金のプロが伝える「激変する進学事情」
2020年。世界中が新型コロナウィルスで一変した。そして進学事情も大きく変わろうとしています。
様変わりした高校生の進学事情、新型コロナウィルスが与えた家計や進学への影響は? 奨学金アドバイザー久米さんが、親子だけでなく祖父母にも知ってもらいたい「様変わりした高校生の進学事情」を解説します。

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新型コロナが世の中の様子を一変させました。景気の悪化が確実視されるなか、家計の急変あるいは進学費用に不安を抱える家庭の増加が心配されます。

実際、学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が4月に行った緊急アンケート(319校・1200名が回答)では、保護者や本人のアルバイト収入の減少により全体の15.5%が退学を「少し考える」、4.8%が「大いに考える」と回答し、20.3%もの学生が退学を意識していることが多くのメディアで報じられました。

文部科学省の調査による2012年度の高等教育機関の年間中退率が2.65%であることからしても、学生団体の調査結果は非常に気になる数字です。

できれば中退は避けてほしい事態ですが、仮に新型コロナが終息しても、経済環境が以前の状態に戻るまでには数年間かかるとか、就職氷河期の再来など、悲観的な記事をよく目にします。

進学という進路選択は、その後の人生に影響を与える可能性が高いので、親や祖父母にとっても大きな心配ごとだと思います。

「お金が厳しければ就職すればいい」という意見もあるでしょうが、高校生の進路事情が昔とは様変わりしているという事実を親子・祖父母の3世代で共有することが大切ではないかと考えます。

高校生の半数以上が大学に進学する時代

文部科学省の学校基本調査によると、2019年の浪人生も含めた大学進学率は53.7%と過去最高を更新しました。さらに、短大や専門学校を含めると82.8%が高等教育機関に進学する時代となっています。

では、現在の親・祖父母世代の頃はどうだったのでしょうか。

同調査の過去の結果を見てみると、今年70歳の方が18歳だった1968年の大学進学率は13.8%、就職率は58.9%でした。次に親世代となる今年45歳の方が18歳だった1993年の大学進学率は28.0%、就職率は30.5%となっています。

実はその翌年の1994年に大学進学率が初めて30%を超えました。それにより、1950年の統計開始から実に44年ものあいだ最多進路であった「就職」が「大学進学」に取って代わられたのです。

ちなみに、2019年の就職率は17.6%なので、時代とともに就職層が大学進学にシフトしている様子が見てとれます。

少し乱暴な表現ですが、大学進学率が低かった時代は「大学生=エリート=人生の保証」という図式がある程度通用していたかもしれません。

しかし、高校生の半数以上が大学に進学し、短大や専門学校を含めると8割以上が高等教育機関に進学する現在では、「進学=人生の保証」とは言い切れなくなっています。

当然、高等教育機関へ進学せずに就職を選択する高校生もいます。高卒就職のほとんどが正社員として採用されるので重要な進路選択であることは間違いありません。

しかし、バブル崩壊以降の産業構造の変化などを受け、高校生の就職事情も激変しています。厚生労働省の調査によると、高卒求人数は1992年の152万人をピークに急激な減少傾向に入り、最新の2020年3月卒者では、コロナの影響も受け33万6000人とピーク時の8割減となっています。求人倍率自体は2.08倍と高水準を維持しているものの、募集業種は建設業やサービス業などが多く、昔と比べて職種の選択肢がはるかに少なくなっているのが現実です。

また、中小企業でも採用条件を大卒以上とする流れが広がっています。つまり、若者を受け入れる企業や社会そのものが、「進学をあたり前とする」時代に変化しているという事実を理解することが必要です。

昔よりもはるかに高騰した学費

筆者は、奨学金アドバイザーとして活動を始めて15年以上過ぎましたが、今回のコロナショックは2009年のリーマンショック以上の不安を感じています。
言うまでもなく、大学や専門学校に進学するには大きなお金がかかります。しかも、学費は年々上昇し続けて昔よりもはるかに高騰しているのです。

たとえば、平成元年の1989年に34万円だった国立大学の平均授業料が今では54万円に。私立大学も57万円から2018年には90万円と、ともに1.6倍に高騰しています。さらに私立大学では授業料に加えて施設設備費などが必要になるほか、学部系統で学費が大きく異なります。

2020年4月現在、全国には795校の大学が設置され、その8割近くを私立大学が占めています。短大や専門学校では私立割合がさらに高いので、学費を考える際には私立を中心に見ていく必要があります。そこで、学部系統別の私立大学の最新の初年度納入金の平均額を整理してみました。

上昇する学費に対して伸び悩む保護者の収入

次に肝心の保護者の収入について見てみます。

国税庁の民間給与実態調査で見ると、給与所得者の平均給与が1989年は402万円。その後上昇が続くものの1997年の467万円をピークに減少に転じ、2018年が441万円となっています。

1989年比でわずかとはいえ1.1倍に上昇していますが、社会保障費負担の増加などで実質賃金は減少しているのが実情です。

民間給与に関しては、本稿執筆時点の9月29日にさらに心配をあおるニュースが報じられました。

2020年9月29日付 時事通信配信
民間給与、7年ぶり減少=平均436万円、19年分―国税庁
 民間企業で働く人が2019年の1年間に得た平均給与は前年比1.0%減の436万4000円で、7年ぶりに減少したことが29日、国税庁の民間給与実態統計調査で分かった。従業員100人未満の中小企業の平均給与が減少し、全体を押し下げたことが要因とみられる。
 調査は1949年に始まり、約1万8500事業所の約24万人の回答を基に、全体を推計した。19年分を対象とした調査のため、新型コロナウイルスの影響は反映されていない。

時事通信配信

記事では、2019年分の結果でありコロナの影響は反映されていないと書かれています。政府はGo Toキャンペーンで景気のテコ入れを図っていますが、2020年の結果はさらに厳しいものとなることが予想されます。

高騰した学費と低迷する収入で、子どもの進学費用は保護者の負担の限界を迎えていました。そこに突然、誰もが予想しなかったコロナショックが襲いかかったのです。

そのため、進学費用に頭をかかえる家庭はこれまで以上に増えるでしょうし、なかには進学を諦める学生も出てくるかもしれません。

しかし、こんな時だからこそ、冷静に考えてほしいのが奨学金です。

奨学金の仕組みやポイント、注意点などについて親子で正確な知識を共有して検討することが大切ではないかと思います。

今回は、進学率、就職率、学費の変遷をもとに、様変わりした高校生の進学事情を解説しました。 次回以降では、奨学金の仕組み、奨学金の利用にあたっての具体的なポイントと注意点などについて、わかりやすく解説したいと思います。

この記事は連載特集です。続きの記事はこちら
【緊急特集】奨学金のプロが伝える「最新の奨学金の仕組み・ポイント・注意点」(前編)

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ライター
久米 忠史(奨学金アドバイザー)

奨学金アドバイザー・久米忠史 (くめ ただし)

株式会社まなびシード 代表取締役 2005年頃から沖縄県の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが「わかりやすい」との評判を呼び、現在では高校だけでなく全国各地で開催される進学相談会や大学のオープンキャンパスなどで毎年150回以上の講演を行う。2009年には進学費用対策ホームページ「奨学金なるほど!相談所」を開設。

【著書】
『奨学金完全活用ガイド2022』(合同出版/2022年)
『奨学金まるわかり読本2020』(合同出版/2020年)
『薬学生のための奨学金まるわかりガイドブック』※監修(ユニヴ/2018年)
『借りる?借りない?奨学金見極めガイド 最新版』(合同出版社/2018年)
『借りる?借りない?奨学金見極めガイド』(合同出版社/2015年)
『子どもを大学に行かせるお金の話』(主婦の友社/2012年)