予約採用と在学採用では収入基準が違う! – 日本学生支援機構奨学金の「家計基準」を深掘り!【前半】貸与型奨学金編
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コロナ禍が受験生の家庭に与える経済的ダメージが心配されます。
高校生の8割が大学や短大、専門学校などに進学している現在。景気が悪くなっても無理をしてでも進学する家庭が多いでしょう。
むしろ、コロナ禍により高卒求人が激減したため、今年3月高卒者の専門学校進学率が上昇したと言われており、10年ほど前のリーマンショック時にも同じ傾向が見られました。
家庭の経済状況が厳しくなると、奨学金のニーズが高まることが予想されます。
そこで今回は、日本学生支援機構の貸与型と給付型奨学金の家計基準の内容とポイントについて深掘りしてみます。
目次
実は奨学金の利用率は減少していた!
「大学生の2人に1人が奨学金を利用している・・・」
メディアが奨学金を報じる際によく使われる導入表現です。
こういった文言を目にすると、「やはり奨学金の利用者が年々増加しているのか」と、ほとんどの人は思うはずです。
この表現は決して間違いではありませんが、正しくもありません。実は2013年度をピークに奨学金の利用者数の減少が続いているのです(文部科学省:奨学金事業の充実 公表データより)。
また、日本学生支援機構でも各年で奨学金の利用状況等を調査しています。
下表は昼間部の大学生の奨学金利用割合の年度ごとの推移です。
この調査による奨学金の利用割合には、日本学生支援機構以外のものも含まれ、貸与型だけでなく給付型も含まれています。次に、日本学生支援機構の貸与型奨学金に限った利用割合を見てみましょう。
不思議に思われるかもしれませんが、大学よりも修業年限の短い短大や専門学校のほうが利用割合は高いのです。
筆者が心配しているのが、コロナ禍の影響で奨学金の利用率が再び上昇するのではないかという点です。
そのため、進路に関わらず奨学金情報を正しく理解することが大切だと考えています。
日本学生支援機構の貸与型奨学金の内容のおさらい
日本学生支援機構の貸与型奨学金には、「第一種奨学金(無利子)」と「第二種奨学金(有利子)」、それに入学時の一時金である「入学時特別増額貸与奨学金(有利子)」の3種類があります。
【採用基準】
●第一種奨学金 ➡ 成績と家庭の収入基準をもとに審査
●第二種奨学金 ➡ 実質的に家庭の収入基準のみで審査
●入学時特別増額貸与奨学金 ➡ 家庭の収入基準のみで審査
【申込み方法】
●予約採用
高校3年生の段階で申し込む方法。高校卒業後2年目まで申し込みが可能。
●在学採用
大学や短大、専門学校に入学した後に申し込む方法。原則は春募集のみだが、例年秋募集も行われている。
予約採用と在学採用の収入基準の違いを知る!
前置きが長くなりましたが、ここからが今回の記事の本題です。
実は予約採用と在学採用では収入基準が異なるのです。現在では予約採用が主流となっているため、そのことを知らない家庭も多いと思われます。
結論を述べると、日本学生支援機構の貸与型奨学金では、在学採用のほうが家庭の収入基準の目安額が高く設定されています。したがって、予約採用よりも収入基準のハードルが低くなるといえます。
では、4人世帯の場合の申し込み方法別の収入基準の具体的な違いを見てみます。
予約採用(2022年度入学者の場合) ※4人世帯の場合 単位:万円
在学採用(2021年度入学者の場合) ※4人世帯の場合 単位:万円
予約採用では、進学先の学校種別や通学環境に関わらず一律の収入基準となっています。ところが在学採用では、学校種別や通学環境により細かく収入基準の目安が設定されています。これを見ると、国公立の自宅生以外の進路では、在学採用のほうが予約採用よりも収入の上限基準が高く設定されていることがわかります。
在学採用では入学した学校の年間授業料も控除される!
もうひとつ重要なのが収入から控除される項目です。
在学採用では、「年間授業料+基礎額」が収入から控除されるのです。そのため、表に記載されている金額よりもさらに収入基準がゆるやかになると理解していいでしょう。
在学採用で収入から控除される金額
💡 家庭の状況によっては「在学採用」を見据えて計画を!
予約採用の収入基準を満たしているならは、予約採用で申請すればいいと思います。
しかし、夫婦共稼ぎで奨学金の収入基準を超えてしまっている家庭も多くあるでしょう。さらに、それなりの収入がありながらも住宅ローンなどで実際の家計は火の車という家庭もあるはずです。
そのような状況にあるなら、予約採用ではなく「在学採用」を見据えて資金計画を立てることがポイントとなってくるでしょう。
- ライター
- 久米 忠史(奨学金アドバイザー)
奨学金アドバイザー・久米忠史 (くめ ただし)
株式会社まなびシード 代表取締役 2005年頃から沖縄県の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが「わかりやすい」との評判を呼び、現在では高校だけでなく全国各地で開催される進学相談会や大学のオープンキャンパスなどで毎年150回以上の講演を行う。2009年には進学費用対策ホームページ「奨学金なるほど!相談所」を開設。
【著書】
『奨学金完全活用ガイド2022』(合同出版/2022年)
『奨学金まるわかり読本2020』(合同出版/2020年)
『薬学生のための奨学金まるわかりガイドブック』※監修(ユニヴ/2018年)
『借りる?借りない?奨学金見極めガイド 最新版』(合同出版社/2018年)
『借りる?借りない?奨学金見極めガイド』(合同出版社/2015年)
『子どもを大学に行かせるお金の話』(主婦の友社/2012年)