1. Home
  2. スペシャルインタビュー
高校生におすすめ!

「自分の好きな瞬間」を仕事にする喜び―石原 剛さん(カフェ『TRICHROMATIC COFFEE』オーナー)【連載・夢中人 Vol.2】

「自分の好きな瞬間」を仕事にする喜び―石原 剛さん(カフェ『TRICHROMATIC COFFEE』オーナー)【連載・夢中人 Vol.2】
コーヒーを作りながら、お客様に提供する瞬間が好きだと笑顔で話してくれた石原さん。自分が好きなコーヒーやビールを提供する店を、東京・中野新橋に開業し、お客様とコミュニティを作りながら、日々の変化を楽しまれています。今回は、自分の好きを仕事にするためにしてきたことや、そこで得られた喜びについて語ってもらいました。

⏱この記事は約6分で読めます

連載企画・夢中人とは
「夢中になれる学生生活」をテーマにした『ドーミーラボ』の連載企画、「夢中人」。夢中に生きる人たちをインタビューし、夢中になる方法や必要な経験、生きる上でのヒントを考察します。

コーヒーを作り、お客さんの前に置く瞬間が好きです。

「作ったもので、お金をもらう」。

500円のコーヒーをお渡しして、いただくお金が積み重なっていく。

地味かもしれませんが、それがとても好きなんです。

起業を見据えて、進んできた20代。

そのきっかけは、高校時代にしていた飲食店のアルバイトです。レジでお客様からお会計を頂く度に、目に見えて「対価を頂く」ことの楽しさを感じていました。その頃から、飲食関連で起業をしたい、と思っていました。

経営を学びたくて、商学部に入りました。その過程で始めた簿記の勉強がとても楽しくなり、突き詰めたいなと思って会計の大学院に進みました。会計士を目指すわけではなく、あくまで起業を見据えてのことです。もっと数字に強くなりたいという思いがありました。

大学院は卒業となりましたが、起業するための資金はありません。

まずは就職することにしました。入社したのは小さな商社です。ここで、経理の仕事に就かせてもらい、キャッシュフローの資料作成など、色々な経験をさせてもらいました。

小さな会社で資金繰りなどについて学んだことは、開業資金調達のための資料作りに、とても役に立ちました。もちろん、今の経営ノウハウにもつながっています。

自分の好き、をベースに進んだ店作り。

飲食といえば、何屋さんをやるか、という話ですが、自分が好きなコーヒーか、ビールを出すお店がやりたいな、と思っていました。

商社に4年勤め、資金も貯まったのでいよいよ独立することになったちょうどその頃、「ブルーボトルコーヒー」に代表される、サードウェーブコーヒーが注目され始めていました。実際にお店を回ってみて、自分のコーヒーに対する常識が覆った気がしました。この概念を広めていきたいと思い、コーヒーショップをやろう、と決めました。

お店は「若い女性にスペシャルコーヒーを、ブラックで楽しんでほしい」というコンセプトにしました。ブルーボトルを含め、コーヒーはカッコいい、男性的なイメージが先行しがちですが、私はカフェというのは女性にとって居心地のいい場所だ、という考えがあり、お店の雰囲気もそのようにしたかったのです。

調布にある「手紙舎」というカフェの世界観が好きで、よく通っていました。ご縁があって、そのカフェを手掛けた設計士さんを紹介して頂くことができ、店作りが始まりました。場所探しには少し難航しましたが、新宿からもほど近い、中野区の中野新橋駅前に決まりました。そこから本格的に準備を進め、2017年の秋「TRICHROMATIC COFFEE(以下、トリクロ)」をオープンさせることができました。開業するなら30歳までに、と思っていましたので、ちょうど間に合いました。

経営は地味で不安も多いけど、日々の変化が楽しい。

コーヒーをお出しして、お客様からお金を頂く瞬間が好きだと話しましたが、自分の店になると、なおさら楽しいですよね。

飲食業の楽しみは、目に見える形で「対価交換」があること。「日銭を稼ぐとはこのことだな」と、日々ありがたみを感じています。

続けるために不可欠なのは、当たり前ですが、「毎朝ちゃんとお店を開けること」。

毎朝早起きして仕入れに行って、まずはオープンする。こつこつ、諦めない。お客さんが来ない日もあるけど、粘り強く。
自営業というのは、毎日同じことの繰り返し。それにいかに耐えられるか、ということだと思います。その日々の中で、売上が今日はいいなとか、毎日数字が変わります。その変化を楽しんでいます。

お客様から生まれた、お店の変化。

トリクロを開いて2年半、コロナ禍が始まりました。

最初はどうなるかと思いましたが、お陰様で生き残り、5周年を迎えることができました。

生き残ることが出来たのは、この店から「コミュニティ」が生まれたこと、そしてそれを大事にしてきたからかもしれません。

オープンして最初の半年で、複数のお客さんと仲良くなりました。やがてお客さん同士も仲良くなっていき、トリクロを中心にしたコミュニティが出来ていったんですよね。最初は年配の方もいらっしゃいましたが、だんだん20代~30代の方も増えてきて、今では広い年齢層の方同士が、ゆるく繋がっている感じです。

中野新橋から引っ越していく方もいらっしゃいますが、SNSなどで引き続きつながっている方も多くて。それも良いですよね。

決して常連さんばっかり、という感じではなく、お店にいる皆さんがそれぞれの時間を過ごしつつ、コミュニケーションを楽しんでいる。そうして生まれていったお店の雰囲気が、新しいお客さんも連れてきてくれているような気がしています。

営業を続けるうちに、お店のコンセプトのひとつに「中野新橋と共に生きる」というのが加わりました。当初は地域密着というのは頭になかったですが、こういう時代ですから、きっとお客さん側も、そういったコミュニティを求めていたんじゃないかなと思っていて。

店名の「TRICHROMATIC」というのは、光の三原色という意味です。音の響きと、光の三原色にある「変化していく」という意味がすごく良いと思っています。お客様の存在もあり、お店は少しずつ変化し、成長することができています。結果、店名ともシンクロしていますね(笑)。

こつこつ続ける日々の中で踏み出す、次のステップ。

トリクロで、コーヒーショップは叶ったので、次はクラフトビールを出すお店をやりたいと思いました。この1年、地域密着型のクラフトビール屋さんを巡り、コンセプトを固めていきました。そうして、2022年の11月に、同じ中野新橋に2店舗目となる「MIDNIGHT BREW(ミッドナイトブルー)」をオープンさせることができました。

MIDNIGHT BREW

トリクロはテイクアウトもできるコーヒースタンドのイメージなのに対し、ビールがメインの「ミッドナイトブルー」は、居心地重視のお店にしました。トリクロが明るい昼間のコーヒーショップなら、今度は夜の空間。ゆったりとクラフトビールを味わってもらえる、そんなお店を目指しています。

2店舗目のオープンまで5年を要しましたが、今度はもっと早いペースでお店を増やして行きたいと思っています。せっかくですから、会社も大きくしていきたいですよね。

もちろん、半年後、1年後どうなるんだろう、という不安もあります。けど、いい意味でお店に期待し過ぎず、お客様と、そして中野新橋の皆さんと一緒に、引き続き日々を楽しみ、積み重ねて行ければ。そう思っています。

プロフィール

石原 剛(いしはら・ごう)
1987年生まれ、東京都小平市出身。大学院卒業後、商社勤務を経て、2017年、東京・中野新橋駅前にコーヒーショップ「TRICHROMATIC COFFEE」を開業。5周年の節目となる2022年には姉妹店となる「MIDNIGHT BREW」をオープンさせた。

お店の情報

TRICHROMATIC COFFEE(トリクロマティックコーヒー)
東京都中野区弥生町2丁目23−7
東京メトロ丸ノ内線「中野新橋」駅徒歩すぐ
公式Instagram
https://www.instagram.com/trichromaticcoffee/

MIDNIGHT BREW(ミッドナイトブルー)
東京都中野区弥生町2丁目31-18
東京メトロ丸ノ内線「中野新橋」駅から徒歩2分
公式Instagram
https://www.instagram.com/midnight.brew/

(文:雨庭・Totty/撮影・取材:西泰宏・眞道悠太朗)

ライター
ドーミーラボ編集部

「夢中になれる学生生活」を探求するウエブマガジンです。進学や進路のあり方、充実した学生生活をおくるために実践できる知恵やヒントを発信していきます。