「新しい環境で挑戦する理由」—日野田直彦さんが語る、高校生・大学生へのヒント【特別インタビュー】

教育改革の最前線で活躍してきた日野田さんは、「遊び」「アウェー体験」「嫌なことへの挑戦」が人生を変える力になる、と説きます。この記事では、彼が実践の中で見つけた「これからの生き方」を、今を生きる高校生・大学生に向けてお話いただきます。
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遊びの時間が未来を作る

「イノベーションってね、余白からしか生まれないんですよ。忙しい毎日を送っているだけでは無理です。」
日野田さんはそう語ります。学校や塾、バイトや部活でスケジュールが詰まりがちな高校生や大学生こそ「ぼーっとする時間の大切さ」を強調します。
「武蔵野大学中高では、生徒たちに『ぼーっとする時間』を意識的に作ってもらいました。 保護者の方には『無駄なんじゃないか』と思われるかもしれないけど、実はそういう時間が、子どもたちの次の一歩を支えてくれるんです。遊びや余白が、アイデアを生むんですよ。」
友達と笑い合ったり、一人で何もせず空を眺めたりする時間。タイパ、コスパの観点だと一見無駄に見えそうな「余白」が、実は未来を切り開くカギになるといいます。
「気持ち悪い」っていうのは最高の褒め言葉
「僕はね、生徒によく『気持ち悪いって言われることは褒め言葉だ』って言うんです。」
日野田さんは語ります。その理由は、「気持ち悪い」と言われることが「違和感がある」ということであり、それは「人と違う視点を持っている証拠」だから。
「日本の教育って、『お手』って言われたらその通りに動く犬を育てるみたいな部分があるんですよ。でも、僕は『お手』って言われたら噛んでいいよって生徒に伝えます。『お手』と言っている人が間違ってると思ったら、自分で考えて動く。人と違うことを恐れないで、むしろそれを楽しんで欲しいんです。」

違和感を持つことや、人と違うことを堂々と受け入れる。それが若い時期の大切な学びになると日野田さんは考えています。
慣れた場所から一歩外に出る「アウェー体験」
「『アウェー体験』っていうのは、自分の慣れた環境から飛び出して、新しい世界に身を置くことです。」
日野田さん自身、現場主義を貫いてきた人です。マサチューセッツ工科大学に学校提携を直接交渉したエピソードは、その象徴です。
「メールでアポイントが取れなくても、現地で待ち伏せすればいいんです。実際に所長が出てきた瞬間に『お前がメールしてたやつか!』って始まって、話が動きました。オンラインじゃ感じ取れない空気感や温度感、相手の本気度を見極めるには現場に行くしかない、嗅覚を磨くしかない」

短期留学、ボランティア活動、寮生活。
新しい環境で自分を試す経験は、必ずあなたの成長に繋がると、日野田さんは語ります。
嫌なことへの挑戦=視野を広げるチャンス
「好きなことだけをやっていると、最終的に狭い世界で閉じ込められてしまうんですよ。」
日野田さんは、高校時代に師匠から「苦手なことに挑戦しろ」と言われ、コンピュータや数学などが得意だった理系専攻から一転、大学では日本思想史学という、文系の道へ進みました。

「帰国子女で日本語が苦手だったのに、漢文を読むとか、正直めっちゃしんどかったです。でもその経験を通じて、物事を多角的な視点から見る力がつきました。好きなことだけじゃなく、嫌なことにも挑戦する。それが人生の幅を広げるんです。」
例えば、苦手な科目の勉強にあえて挑戦してみる。普段読まないジャンルの本を開いてみる。それだけでも、新しい世界への扉が開くといいます。
自分の枠を超えてみよう
「若い時に、どれだけ自分の世界を広げられるかが勝負です。」
日野田さんは、生徒に「とにかくやってみる」ことをいつも勧めているそうです。

「失敗してもいい。むしろ失敗しないってことは、何も挑戦していないってことです。親元を離れてでも、どこででも生き抜ける力を身につける経験が大事です。」
彼自身、自転車で日本一周をした経験があり、その旅を通じて人の温かさや、日本の良さに気づいたといいます。
「例えば、ユースホステルで知らない人とギター弾きながら語り合ったりとかね。一見アホみたいな、あるいは泥臭い体験。これが意外と自分を作るんですよ。高校生とか大学生のうちしかできないことを、絶対やった方がいい。」
まとめ:遊んで、挑戦して、アウェー体験を楽しもう!
遊んで、挑戦して、アウェー体験を楽しもう!
•遊びの時間を大切に:ぼーっとする時間が次のアイデアを生む。
•アウェー体験をしよう:親元や地元を出て、新しい世界を感じる。
•嫌なことにも挑戦しよう:苦手なことが視野を広げ、成長につながる。
「まずは、とりあえず一歩踏み出してみてください。怖くてもいいんです。失敗したら、その時は笑えばいい。人生なんとかなるって思えば、絶対なんとかなります!」
さあ、自分の枠を飛び出して、新しい可能性を見つけてみませんか。
プロフィール

日野田直彦(ひのだ・なおひこ)
1977年大阪府生まれ、幼少期をタイで過ごし、帰国後は同志社国際高等学校で帰国子女として当時の最先端の教育を受ける。大学卒業後は、進学塾、私立中高の新規立ち上げ、公立・私立の校長などを経験。36歳で校長になった大阪府立箕面高等学校では、地域で4番手の普通の高校の生徒が海外の大学に多数進学し、注目を集めた。また、武蔵野大学中学校・高等学校を定員割れで倒産寸前の状態から、学校説明会に毎年のべ1万人以上の親子が参加する学校へと改革した。2022年には、募集を停止していた千代田高等学院の中学校を、千代田国際中学校として再開し、学校再建のロールモデルの構築に取り組んできた。
Photo:竹田武史 / Interview:戸谷和宏 / Text:坪井久人 / Edit Support:西泰宏