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学生寮の歴史を紐解いてみた―激動の時代を超えて、今日の学生寮まで

更新日 2022.11.17
学生寮の歴史を紐解いてみた―激動の時代を超えて、今日の学生寮まで

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多くの学生が学びと暮らしを共にし、かけがえのない時間を過ごす学生寮。

日本における大学の寮は、どのような歴史をたどってきたのでしょうか。明治以降から戦後、現在に至るまで、学生寮の長い歴史について振り返ってみましょう。

明治期―学生寮のはじまり

日本の学生寮のはじまりは、明治期にさかのぼります。

現在の大学の前身となる旧制高等学校が、1886年(明治19年)の中学校令に基づいて発足。1890年(明治23年)に旧制第一高等学校長である木下廣次が、学生に自治を認めた自治寮(のちの東大駒場寮)を開設しました。日本における大学の寮の歴史は、ここから始まったと考えて良いでしょう。

その後、他の旧制高等学校や私立大学へも、寮設置が広まっていきます。

運営主体も大学当局のみにとどまらず、地方の有志、卒業生、篤志家により作られた寮もでき、宗教・文化的な側面を持つ寮も増えていきました。

最初期の大学寮として現在まで残っているのが、かの有名な「京都大学吉田寮」です。

吉田寮は第三高等中学校(京都帝国大学)の遺構であり、現存する大学学生寮の建物としては日本最古のものです。

大正期〜戦前までの学生寮

当時の学生寮では、学生による秩序やルール形成が行われはじめ、やがて学生による自治で運営されるものが増えてきました(自治寮)。多くの学生寮では「寮歌」が作られ、当時の教育事情が反映された内容も多くみられました。学生たちはこれを拠り所として、互いの結びつきを深めていきました。

第一次世界大戦以降は、大正デモクラシーの影響を受ける形で、旧制高等学校などで学生運動が度々起きるようになっていきました。学生寮は、文化・政治的な共同体という側面が強くなっていきます。一方で、学年による寮内での「上下関係」や、新入生や寮の規律を破った学生に対する制裁、いじめといったような悪習もみられるようになりました。これらの様子は『学生時代』(久米正雄, 1891-1952)など、文学作品の中でも度々描かれています。

社会運動の高まり

昭和に入り第二次世界大戦が勃発すると、戦時体制の強化のため、学生寮においても「報国隊」が組織され、学徒出陣により戦地に赴く学生も少なくありませんでした。

戦後「学生運動の拠点」となった学生寮

戦後に入ると学生寮は、いわゆる学生運動の拠点としての立ち位置が濃くなっていきます。

第二次世界大戦中は政府などからの圧力により解体されていた学生運動ですが、1948年(昭和23年)には学生自治の連合組織である全日本学生自治会総連合(全学連)が結成されます。安保闘争(1960年の日米安全保障条約改定をめぐる反対運動)ではこの全学連が運動の中心を担いますが、闘争後に組織は分裂。一時学生運動は下火となりますが、60年代後半の全共闘運動などを通して再び激化していきます。

学生運動の激化

運動の内容は安保闘争やベトナム戦争への反対を訴えるものから、学費値上げ反対や学風の開放を訴えるものまで、大学やその時代により様々でした。

東大駒場寮をはじめ、数多くの学生寮が学生運動の拠点となりましたが、学生寮の自治会における主導権をめぐって、学生運動グループ間での争いも激しくなりました。

全共闘運動以降は、上記のようなグループ間での争い(いわゆる「内ゲバ」)や、過激派によるテロ・ゲリラ事件が相次いだことから、次第に学生たちはこれらの活動とは距離を置くようになり、学生運動にかかわる寮生が一部の寮に残るのみとなっていきました。

2001年(平成13年)には駒場寮が閉寮、2008年には自治会連合も解散となり、「学生運動の拠点」としての学生寮はほぼ、終焉を迎えました。

学生運動なきあと、学生寮は「教育寮」へ

多くの大学寮が学生運動の拠点となり、一部は過激派の活動拠点となったことの反省から、1970年代後半以降、学生寮は一部の伝統的な自治寮を除いて、学生による自治から大学による管理運営へとシフトしていきました。管理運営は大学の学生課などの部署が担当し、職員やOBなどを「寮監」として置くケースが多くなりました。共同生活のルールを中心とした内容の寮則が決められ、共用部の清掃や電話の取り次ぎなどには、寮生が当番で担当するケースが多くみられました。また、部屋は2人~4人で1室を使う相部屋が多く、上位の学年になると研究や制作に集中できる環境を提供するため、個室が提供される、という寮もありました。

規則の厳しさは大学の運営方針などによって様々でしたが、学生寮は、互いに共同生活のルールを守りながら生活をし、礼節と協調性を身に付ける場、として概ね考えられてきました。つまり、「学生寮=教育の場」という役割を担うようになってきたのです。

時代の変化とともに進んだ「寮ばなれ」

1980年代後半になると、建築技術の進化もあって、規格型の賃貸アパート・賃貸マンションが多く建てられるようになり、都心部のワンルームマンション、学生専用マンションなども現れはじめました。

賃貸アパート・マンションの台頭(イメージ)

学生にとっても、単身で気兼ねなく住むことができるアパート・マンションの人気が高まりました。その一方で、生活ルールや規則に縛られ、かつ相部屋のケースも多かった学生寮は、次第に人気を落としていきました。以前の「学生運動の拠点」のイメージから、学生寮を敬遠する人々も少なからず居ました。

学生寮の人気が下がる中、大学には寮の土地と建物の維持が固定費用として大きくのしかかってくることから、90年代後半頃から、寮を閉鎖、あるいは縮小する傾向も見られるようになりました。

それまで寮あるいは下宿がほとんどだった学生の一人暮らしに、賃貸マンション・アパートという選択肢が加わり、それらの人気が高まるにつれ、学生・大学それぞれに「寮ばなれ」の動きが起こったのです。

グローバル化をきっかけに進んだ「寮への回帰」

2000年代に入ると、大学にも「国際化」の波がやってきます。

2000年に、大分県に立命館アジア太平洋大学が開学。2004年には、秋田県に公立の国際教養大学が開学し、さらに早稲田大学が国際教養学部を開設しました。国際教養を軸としたカリキュラムが増えていく中で、海外の大学と提携し、留学生を受け入れる大学も増え始めたのです。

そのような流れにおいて、大学では留学生を受け入れるための宿舎が必要となりました。

空室の多かった既存の寮を留学生宿舎に変えて学生を受け入れる、寮を新設するという動きもみられるようになりました。欧米では、大学キャンパス内あるいは近隣の場所に寮が設けられているケースがほとんどであることから、特に交換留学生の受け入れをするにおいて、寮は必然の存在であったのです。

立命館アジア太平洋大学と国際教養大学では、開学とともにキャンパス敷地内に学生寮が整備されました。この2大学の学生寮は、はじめから日本人学生と留学生が同じ寮で暮らし、生活しながら国際交流ができるよう、設計や運営内容が工夫されています。

立命館アジア太平洋大学 APハウス(Dorm編集部撮影)

早稲田大学においても、2004年以降、早大生専用の国際学生寮「WID(Waseda International Dormitories)」が大学の通学圏内に順次整備されていきました。

このように、グローバルな学習カリキュラムと日本からの留学、および海外からの留学生の来日が盛んになるにつれ、再び学生寮は増え始めたのです。

民間企業が手掛ける「学生会館」も人気に

他方、それまでは大学が所有し、運営するケースが多かった学生寮ですが、民間の企業が運営する学生寮も増えてきました。大学が寮運営企業と提携し、寮の運営・寮における学生のサポートを企業に委ねる「提携寮」「推薦寮」です。「提携寮」「推薦寮」は、特定の大学の学生だけが入居できる大学専用寮のほか、複数の大学、あるいは専門学校や予備校の学生も入居する学生寮があります。

これらの学生寮は、それまでの学生寮のイメージとは違い、1名ずつの個室となり、当番もなく、門限などのルールも緩やかで生活スタイルが比較的自由なケースが多く、従来の学生寮と区別して「学生会館」と呼ばれるようになりました。

学生会館では、運営企業の特長を生かし、質の高い食事や便利な生活サービスが提供されています。学生会館には生活のサポートをしてくれる寮長・寮母が常駐しており、初めての一人暮らしで何もかも自分でこなさなければならないという負担は少なくて済みます。学生本人、親どちらにとっても安心できることから、学生会館の人気も年々高くなっています。

日本の学生会館では、共立メンテナンスが全国に展開している「学生会館ドーミー」、毎日コムネットが運営している「カレッジコート」などが有名です。近年では、分譲・賃貸マンションの管理が中心であった伊藤忠アーバンコミュニティや東急不動産グループが学生会館事業に進出し、個性的なコンセプトを持つ物件も増えてきています。

さらに加速するグローバル化と、高まってゆく「寮の価値」

2009年には文部科学省が国際化拠点整備事業(グローバル30、大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業)を推進し、採択された大学を中心に、海外留学生の受け入れがさらに強化されました。

学生寮も、この動きに呼応するように積極的に整備されるようになり、2020年代に入っても新たな学生寮が次々と開設されています。大学が提携する学生会館も年々増加し、留学生の受入先の一つとなりました。学生寮、学生会館は「国際交流の場」となったのです。

早稲田大学が2014年に中野国際コミュニティプラザに開設した国際学生寮「WISH(Waseda International Student House)では、約900名の日本人学生と留学生が、グローバルな共同生活を送っています。

近年開設される寮では、プライベートな空間を確保した個室と、3名~6名程度で水回りやリビングスペースをシェアするユニットスタイルをとり、同じユニットに日本人と留学生が混住するように部屋割りが行われるケースも多くみられます。学生のニーズにあわせて、コミュニティラウンジや学習スペースといった共用スペース、大浴場やサウナなどのアメニティスペースが充実した寮も見られるようになりました。

2019年にオープンした明治大学和泉キャンパス横の「明治大学グローバル・ヴィレッジ(MGV)」、2022年にオープンした龍谷大学専用寮「Ryukoku Student Home 光輝」では、食堂をはじめ交流ラウンジ、ミーティングルーム、テラスなど、学生が様々な目的で使える設備が充実しています。

学生寮は単なる宿舎ではなく、国籍を超えて学生同士の絆を深め、共同生活を通して成長していく場としての価値が見いだされるようになってきたのです。

人材育成の場としても期待される学生寮

昨今では学生寮の環境を活かして、人材育成の取り組みも盛んに行われています。

その筆頭とも言えるのが、RA(レジデント・アシスタント)制度です。

RA(レジデント・アシスタント)とは、寮に一緒に生活しながら、生活をサポートしてくれる学生のことです。

大学寮文化が根付いているアメリカなどでは、寮にRAがいることが一般的で、RAの学生が寮のコンダクターとして新入生の相談に乗ったり、寮内でのイベント企画を通して寮生同士の絆を深めたりと、日々の生活を支え、寮を盛り上げます。

これは、旧来の寮における自治のようなものとは全く別で、各学生がRAの制度、RAとしての活動の中で自主的に様々な課題に向き合い、学生としての自己成長、さらには社会のリーダーとして必要な資質を身につけるための場として、大きな役割を担っています。

日本の学生寮においては、先述の立命館アジア太平洋大学の「APハウス」、国際教養大学の「こまち寮」が、RA制度をいち早く取り入れました。RA導入寮は、国立・私立問わず多くの大学に広がっています。共立メンテナンスが全国で運営する大学専用寮や学生会館「ドーミー」の一部でも、RA制度が導入されています。

また、寮生を対象に行う教育プログラムを運営する大学も増えています。先述の早稲田大学国際学生寮WISHで行われる「SIプログラム」、立命館アジア太平洋大学の「グローバル・シティズンシッププログラム」、関西大学の「人材育成プログラム」などが挙げられます。言語だけにとどまらない相互文化理解の取り組みや、OB・OGのネットワークを生かした企業との交流やワークショップなど、様々なプログラムが展開されています。

まとめ―学生寮のこれから

日本の学生寮は、ひと昔前は規律や上下関係が厳しいイメージがありました。また、相部屋や門限といった制約に対するネガティブなイメージから、敬遠されるケースもこれまで多くみられました。
しかし近年は、時代の流れや学生のニーズに合わせて、プライベートを重視し、設備やサービスを充実させ、多様な生活スタイルにも対応した学生寮が増えてきました。また、単なる生活の場だけではなく、国際交流・コミュニケーションの場としての役割や、人材育成に及ぼす効果など、様々な面から注目を集めています。

2020年以降のコロナ禍では、オンライン授業が中心となったことで、アパート・マンションで一人暮らしをする学生の孤独が課題となりました。(参考:『コロナ禍の大学生、悩み深刻』西日本新聞 2020年9月19日) 住まいで過ごす時間の割合が増えるなか、一人よりも安心で、同じ世代や同じ学校の友達と毎日顔を合わせられる学生寮は、住まいの選択肢としてあらためて見直されています。

新たな寮の整備に力を入れる大学も増え、個性をもった寮も増えるにつれて、「この寮に入りたいから、この大学を選んだ」という学生も、今後増えていくかもしれません。
学生寮のこれからの進化にますます目が離せません。

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学生寮(学生会館)とは

ライター
ドーミーラボ編集部

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