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特集 【神山まるごと高専×ドーミーラボ】

「壁にぶつかりながら学ぶ」― 神山まるごと高専・学生が築いた“自治寮”という実験場。【神山まるごと高専×ドーミーラボ】#2

「壁にぶつかりながら学ぶ」― 神山まるごと高専・学生が築いた“自治寮”という実験場。【神山まるごと高専×ドーミーラボ】#2
「神山まるごと高専」の寮は、学生たちが自らルールを決め、仕組みを運営する「自治寮」。人数が増え、壁にぶつかりながらも、試行錯誤を重ねて少しずつ形をつくってきました。

その中心にいたのが、1期生のキアさんと楽大さん。今回は、ゼロから自治を築いた二人が語る、葛藤と挑戦、そしてそこから得た学びに迫ります。

⏱この記事は約4分で読めます

※この記事は【後編】です。
前編はこちら:「ここは小さな社会、あなたは大人」― 神山まるごと高専・松坂事務局長が語る“自治”の教育に迫る。【神山まるごと高専×ドーミーラボ】

自治寮の取り組みは、どのように始まったんですか?

キアさん
1年目は40人だけだったので、ルールもトラブルもその都度みんなで話し合って決めていました。小規模だからこそ機能していたんです。
でも、2年目に80人に増えると一気に「話が通らない」「距離が遠くなった」と感じるようになって来たんです。みんながそれぞれ大人に意見を言いに行くから、結局形にならない。だったら代表を立てて意見を集約した方がいいのでは?という流れで、組織化が始まったんです。

楽大さん
僕にも同じ感覚がありました。最初は「組織なんていらない」という空気が強かったんです。「上下関係は嫌」「トップを決めたくない」という議論が1期生の中でもずっと続いていました。
でも、人数が増えると自然に「仕組みが必要だよね」という流れになった。最初から決まっていたのではなく、必要に応じてつくってきた感じです。

現在の自治組織はどのような仕組みになっていますか?

キアさん
大きく分けて「学生寮長」「自治マネージャー」「監査」の3つの役割があります。
寮長は、寮のビジョンや方向性を示す存在。私がやっていたのは、寮の“目的”や“6つの柱”(安心、安全、健康・衛生、相互扶助、自立・自律、余白)を共有しながら、みんなの理想を引き出すことでした。委員会も10以上あって、清掃、防災、防犯、保健など生活を支える仕組みを担っています。

楽大さん
自治マネージャーは寮生からの悩みや意見を拾い、必要に応じて改善につなげる役割。監査は委員会や他の役職の活動がちゃんと回っているかを第三者としてチェックする立場です。ちなみに学生寮長と監査は立候補制ですが、「相談しやすい人にしてほしい」という配慮で自治マネは他薦です。

組織運営を進める中で、ぶつかった壁や葛藤はありましたか?

キアさん
たくさんありました。たとえば私が寮長として動くと「トップダウンに見える」と言われるんです。「上下関係みたいで嫌だ」「寮長はいらないのでは?」という議論が繰り返され、白紙になりかけたこともありました。
私は「伴走したい」という気持ちでしたが、仕組みが整いきっておらず、それを伝えるのが難しかったのがつらかったです。

楽大さん
寮ミーティングの意義が伝わらないことも悩みの一つです。
「週1回1時間の会議に意味あるの?」という声もありました。学校外の活動が忙しい学生も多く、「寮は寝るだけの場所」と考える人もいる。どうすれば自分なりの関わり方を見つけてもらえるかは、ずっと模索しています。

改善のために工夫してきたことはありますか?

キアさん

昨年は委員会に自治マネージャーがメンターとしてついていましたが、今は委員会が「自走」できるように体制を変え、問題解決だけでなく「関わりやすい仕組みづくり」にも取り組んでもらっています。少しずつ良くなってきたと思います。

楽大さん
仕組みとしては整ってきましたが、それを「学び」に変えるのはまた別のフェーズです。“人間力を育む”という寮の目的を、制度から個人の成長へどうつなげるか。時間はかかりますが、それができたとき未来は必ず良くなると思います。

お互いの働きぶりや変化を、どう感じていますか?

楽大さん → キアさん
常に自分の芯を持っているところ。学生寮長という立場上、風当たりの強い場面が何度もありました。そういったことに悩まされることもあったと思いますが、それでもより良い寮にすべく、動き続けている。本当にすごいと思いますし、感謝しています。

キアさん → 楽大さん
楽大は本当に連絡が丁寧。私は大雑把で「これお願い〜」と投げてしまうのですが、楽大の連絡は5W1Hがしっかりしていて誰にでも伝わる。尊敬しています。
それに町民にも学生にも好かれる愛嬌があって、情報収集力もすごい。いつも助けられています。

これから挑戦してみたいことは?

キアさん
「寮に疲れたときに逃げられる場所」を作りたいです。どんなにいい寮でも息苦しくなる瞬間はあるはずだから。
あとは卒業時に自分の個展を開きたい。今はその準備を少しずつしています。

楽大さん
僕は「なんでもやってるけど面白い人」になりたい(笑)。寮のこと以外にも地域でそろばん教室を開いたり、企業でインターンしたり、いろいろ挑戦中です。興味のあることを全部やって、自分の糧にしていきたいです。

最後に、「この寮ってどんな場所?」と聞かれたら?

キアさん
「修行の場」ですね。本当に出会いが多くて、この寮に住んでいたからこそ出会えた人たちばかり。人と作る・人と生きる・自分を見直す…そのすべてを含めて、修行してるなって感覚です。

楽大さん
僕にとっては「全部の土台」。すごい豊かな土壌、フィールドみたいな感じですね。 生活、出会い、学びのきっかけを与えてくれる。これからの人生を豊かにしていく、そんな学びが人間力を育む場みたいな場なのかなっていうふうに思ってます。

―― ありがとうございました!

編集後記

1期生としてゼロから自治の仕組みをつくり、壁にぶつかりながらも「どうすればよくなるか」を問い続けてきた二人。その姿は、「自治」という言葉以上に、「自分たちの未来をどうつくるか」を真剣に考え続けてきた証でした。次の世代がこのバトンを受け取ったとき、この寮はさらに豊かな学びの場へと進化していくと感じました。

ライター
ドーミーラボ編集部

「夢中になれる学生生活」を探求するウエブマガジンです。進学や進路のあり方、充実した学生生活をおくるために実践できる知恵やヒントを発信していきます。

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