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第二の人生を楽しむ!セカンドライフからはじめる「一人暮らし」—瀧本 哲哉さん(京都大学ジュニアリサーチャー)

第二の人生を楽しむ!セカンドライフからはじめる「一人暮らし」—瀧本 哲哉さん(京都大学ジュニアリサーチャー)
「59歳の京大生」として注目を集め、2022年に書籍『定年後にもう一度大学生になる 一日中学んで暮らしたい人のための「第二の人生」最高の楽しみ方』(ダイヤモンド社)を上梓した瀧本哲哉さん。千葉県にお住まいをお持ちでありながら、京都大学に通うため家族と離れて大学の寮で1人暮らしをされていました。そんな瀧本さんに、好きなことをするために一人暮らしをすることについてお聞きしました。

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瀧本 哲哉さん

1956年、北海道函館市生まれ。  23歳で大学を卒業後、金融機関に36年間勤務。 次男が通学する北海道大学のキャンパスに強く惹かれ、もう一度大学生になることを決意。2015年4月、京都大学経済学部に入学。2019年4月、京都大学大学院経済学研究科入学。2022年6月『定年後にもう一度大学生になる 一日中学んで暮らしたい人のための「第二の人生」最高の楽しみ方』(ダイヤモンド社、2022年)を上梓。

聞き手:戸谷 和宏

株式会社共立メンテナンス レジデンス市場開発部 リーダー
学生寮・社員寮の営業を経て、「学生会館ドーミー」「大学寮ライブラリー」など、共立メンテナンスの学生寮事業に関するWebサイトのプロデュース・運営を担当。本サイト「ドーミーラボ」編集長。

55歳から受験勉強をはじめた理由とは?

戸谷:瀧本さんは銀行員として働いていた55歳の頃から、受験勉強をはじめたとお聞きしていますが、なぜ急に受験勉強をはじめたのですか?

瀧本:大学卒業後、千葉県で銀行員として30年以上働いて、​​55歳になって関連会社に出向になりました。出向するとそれまでよりも仕事量は減り、給料も減りますが、その分自由な時間も増えるのです。私は出向になる前から、時間ができたら何かやりたいなとぼんやりと考えていました。

戸谷:出向って、ドラマなどでネガティブな描かれ方をすることが多い気がしますが。

瀧本:全然ネガティブじゃないんですよ。大部分の銀行員にとっては当たり前のことです。

戸谷:受験勉強をやることに選んだのはなぜでしたか?

瀧本:出向を迎えた時期に、子どもが通う北海道大学の大学祭を見に行ったことがありました。数十年ぶりに大学の空気に触れたのですが、そこで「もう1度、大学に行ってみたいなぁ」という感情が芽生えてきたのです。そのときは、ただ大学生になって勉強したいというだけで、どんな生活が待っているかなんて考えてもみませんでした。

戸谷:お子さんがきっかけでもあるのですね。

瀧本:そうですね。千葉の自宅には子どもが残していった参考書がたくさんありましたので、最初は本当に軽い気持ちで休日や仕事終わりに手探りで勉強してみることにしました。

戸谷:仕事終わりに勉強するって大変そうですね。

瀧本:ところが、すごく楽しかったんですよ!大学を目指すことよりも、受験勉強をすること自体がすごく面白くなってきて、仕事終わりに喫茶店やファミレスに寄って勉強をするというライフスタイルがとても楽しかったのですよ。

学び直してわかったこと

戸谷:瀧本さんが学生時代に勉強していた頃と感覚は違いましたか?

瀧本:そうですね。年を重ねて様々な経験を積んだからこそ勉強を楽しく感じられたのかなと思います。

戸谷:改めて受験勉強してみて、新しい発見はありましたか?

瀧本:はい。ありました! それは学生時代に必死で勉強したことは頭のどこかに残っているということです。受験勉強をはじめた当初はブランクが長すぎて、何もかも初めての感覚でした。しかし、勉強を続けるうちに、10代の頃に頑張って勉強していた科目などは、だんだん感覚が蘇ってきて、当時の記憶が鮮明になっていきました。一方で丸暗記だけで適当に乗り切っていた科目は、完全に頭の中から抜け落ちていましたね。

戸谷:脳ってすごいですね!

瀧本:そうなんです。だから「若い頃に必死で勉強したことは、決してムダにはならない」ということを今の若い世代にもぜひ伝えていきたいと思っています。

京都大学の学生寮「吉田寮」での暮らし

戸谷:京都大学に入学してからは、学生寮で暮らしていたとお聞きしています。

瀧本:はい。敷地内にある吉田寮という寮で生活していました。ここは学生による自治が伝統的に受け継がれている寮で、はじめて訪れた時は正直「汚いなぁ」と思っていたのですが、家賃が圧倒的に安かったことと、多様な学生を包み込むような自由な雰囲気に惹かれて吉田寮に住むことにしました。

戸谷:吉田寮はどんな寮だったのですか?

瀧本:昨今よく耳にする「ダイバーシティ」を地で行くような環境でした。男性も女性も留学生も同じ棟で暮らしており、世の中の常識にとらわれない考え方をする思考を持った学生が多い場所でしたね。

戸谷:吉田寮の生活で何か影響を受けたことはありますか?

瀧本:私もこの年齢で大学に入っている時点で世の中の常識からは外れているかもしれませんが、彼らの自由な発想の影響を受けて、「常識にとらわれずに、自分が勉強したいと思ったことを徹底的に勉強しよう」と考えるようになりました。それから、これまでは家事全般を妻任せだったのですが、自炊、掃除洗濯をするようになりました。誰もしてくれないから自分でするしかないのですが、自分の 身の回りのことを は 曲がりなりにも自分でできるようになったのは私にとってのひとつの成長です。

戸谷:寮生活をされていたわけですが、千葉県のご自宅で奥様はどうしておられたのですか?

瀧本:子どもたちはすでに自立して家を出ていましたし、妻としても、私がずっと自宅にいるよりは気楽でいいみたいです。猫とゆったり暮らしています。

戸谷:千葉のご自宅にもよく帰られていたのですか?

瀧本:2、3か月に1回程度ですね。久しぶりに帰ると妻も最初の2、3日くらいは歓迎してくれますが、それ以上長く滞在するようになると、早く京都に帰ってほしいという雰囲気を出してきますね(笑)。

戸谷:なんとなく想像がつきます(笑)。ある程度の年齢になったら1人暮らしの方が気楽なのかもしれませんね。

瀧本:本当にそうだと思います。これまではお互い子育てや仕事に追われてきましたので、この年になったら、それぞれ好きなことをしながら暮らすのも良いことだと感じるんですよね。さらに高齢になってくると、2人で支え合いながら暮らしていくことも必要になってくると思いますが、今はお互いに身体が自由に動くので、1人で自由気ままにやりたいことをやって暮らすライフスタイルが気に入っています。

定年後にも全く新しい道が拓ける

戸谷:瀧本さんは定年直前の59歳で京都大学に合格し、京都大学の学生寮で1人暮らしをスタートされましたが、今までと全く違う土地で暮らしてみていかがでしたか?

瀧本:もちろん最初は慣れないこともたくさんありましたが、今ではすっかり慣れてこの生活を楽しんでいます。学業の面でも、若い学生たちと比べて、この年齢ならではの自由も感じています。

戸谷:具体的にはどのようなことですか?

瀧本:ほとんどの大学生は、大学を卒業した後に就職しますよね。どうしても学生生活の多くの時間が就職活動に費やされることになって、本腰を入れて勉強する時間が少なくなります。研究職を志望する学生は、大学院に進学してからのことも念頭に研究テーマを選ぶことになります。その点、私は就活の必要がないので、勉強時間はたっぷりあります。また、 卒業論文のテーマも自分の興味関心だけで自由に選ぶことができます。誰にも気を使わずに好きなことを好きなだけ研究できるのです。

戸谷:たしかにそれは中高年の学生ならではのメリットですね。

瀧本:私は学部卒業後、迷わず大学院に進学して研究し続けました。京都という歴史ある土地に移り住んでみて、観光するだけではわからない戦前の京都の遊廓、被差別部落や在日朝鮮人集住地などの研究テーマに出会いました。それを博士論文として取りまとめて、博士号を取得することができました。 現在は書籍の出版を目指しています。私は長年の会社員生活から、後先考えずに大学という未知の世界に飛び込んでみて、自分でも全く想像していなかった新しい道が拓けました。仕事や子育てから解放される定年後にこそ、本当に自由な人生が待っているのかもしれません。思い切って新しい土地で一人暮らしをして、定年前からやりたいと思っていたことをやってみることを おすすめします。私の場合は、それが京都大学での学び直しです。もし合わなかったら自宅に戻れば良いだけですからね。

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